これまでの検討から、バリュー平均法の実践では、期待リターンの設定が非常に重要な役割をはたしていることがわかりました。 このエントリでは、これまでの考察の再レビューに加え、新たな実験・調査を行い、バリュー平均法における、期待リターンの決め方について考えます。
期待リターンの役割
これまでの検討のおさらいになりますが、バリュー平均法にとって、バリューパス設定のための必須パラメタである期待リターンは極めて重要な役割を果たします。
のエントリで見てきたように、バリュー平均法のアルゴリズムでは、期待リターンをもとにマーケットが高値圏か安値圏かを判断して、投資金額を変動させることにより、リスクにさらす資金の量を調整しているためです。
コスト平均法と比較すると、この期待リターンの役割の重要性を実感しやすいかもしれません。 バリュー平均法では、毎期の積み立て金額は
- 直近のリターン実績が期待リターンrと同じであればコスト平均法と同じだけ
- リターン実績が期待リターンrより悪ければ、安値水準で買い時と判断して投資資金を増やす
- リターン実績が期待リターンrより良ければ高値水準なので買い控え時と判断して投資金額を減らす
となります。
期待リターンを境目(閾値)として投資金額の増減が切り替わり、その結果コスト平均法よりもダイナミックな投資になっているのです。
期待リターンの推定に挑戦してみる
では、期待リターンはどのように設定するのが一番効率が良いのでしょうか?バリュー平均法の書籍をあたってみましたが、あまり納得のいく説明はありませんでした。 そこで、理解を深めるためにも(無謀ながら)自分ですこし試してみよう!ということで、過去のデータを使い移動平均、最小二乗法などいくつかのパターンで期待リターンを推定してバックテストにかけてみました。その結果は・・・ここにグラフや表を載せる価値もないくらいの大惨敗でした。コロコロと状況に応じて値を変えるとパフォーマンスの劣化につながり、適当に固定値にしたほうがずっと成績がよいことがわかりました。 やはりそう簡単な話ではないということです。
ただ、この失敗の過程で、期待リターンの推定はとても奥が深く難しいということ、バリュー平均法に限った話でなく投資一般のテーマだということが再確認できたのは収穫でした。
期待リターンの推定は専門家でも難しい
期待リターン推定が、投資一般の話ということが再認識できたので、先人たちの英知に頼ることにします。 少し検索しただけでも、
など金融機関研究所から関連するレポートがでています。これらを読んでわかるのは、やはり期待リターンの推定は専門家にとっても難しいこと、そのままズバリの数式はないということです。
また、山崎元さん、水瀬ケンイチさんの著書、ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)にも
- 過去のリターンを期待リターンとして使うことはできない。
- 過去のリターンは固有の歴史1個に対応するデータにすぎず、現在から将来にかけての期待リターンの参考にならない。
- (各種の公的・企業年金は)リスクデータは過去のデータを使うが、期待リターンに関しては、資産ごとにリスクプレミアムを推計し、何らかの主観的な判断も加えたうえで、過去の平均とは異なる形で求めることが多い。
とあります。 専門家であっても、理論的な背景に、勘や経験、主観による判断を織り交ぜて決定しているようです。なるほど、素人が手出しするのは土台無理だったことがよくわかります。
期待リターンはコバンザメ作戦
しかし、ありがたいことに、専門家が高度な理論と勘と経験を駆使して算出された値が公表されています。われわれ個人投資家としては、難しいことは専門家にお任せして、結果だけ利用させていただく、というのが一番よさそうです。いわゆる、コバンザメ作戦。個人ならほかの人が算出して公表している値を借用したって後ろ指さされることはないですからね。
具体的には公的・企業年金基金などから公表されている値を利用することができます。
「投信で手堅くlay-up!」のじゅん@さんが、ネットで入手可能な、期待リターンとリスク、相関係数データ(2014年7月)の記事でネットで入手可能なデータをまとめてくださっています。
専門家がはじき出した結果を利用させていただくといっても、平均値、中央値、何らかの基準で選ぶ(たとえば、それぞれの算定根拠を分析して一番もっともらしいと感じる値を選ぶ)、などいくつかバリエーションはありそうです。
どんな方法で決めるにしろ、最終的には、自分自身でしっかりと納得感をもつことが重要だと感じています。納得感が、マーケットが激しく動いたときのメンタル面での安定剤になりますからね。
自分はどうするか
最初は、バリュー平均法に限定してなんかいい方法ないかな?と大それたこと考えてこのテーマに取り組んだのですが、結果的には投資の永遠のテーマ的問題に帰着してしまいました。 ただ、コバンザメ作戦にのらない手はないということもわかったので、今後次回の積み立て予定月までの間に
- 公表されているもっともらしい値のデータをもっと探してみる
- 基本は専門家にお任せだけど、理論の背景をかじるために積読になっている山崎元さんの本を読む
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を調査する予定です。