バリュー平均法では「安いときは投資額を増し多く買う、高いとき投資額を減らして少し買う、もっと高いときは買わずに売ってしまう」に方針に基づき、「売ってしまう」事もあるのが特徴です。
マーケットが好調で資産評価額が、その期のバリューパスを越えている(その期に投資をしなくてもバリューパスを越えている)場合、売却が発生します。
このときの主な懸念が、売却時のキャピタルゲインに対する課税と、売買コストです。
キャピタルゲイン課税、売買コストについて、原書での議論内容をご紹介しながら考察してみます。
キャピタルゲイン課税
Michael E. Edelson博士の書籍
では、税金についても、過去の米国のマーケットデータを使ったバックテストを行い考察をされています。
税金への対策のための、バリュー平均法のアレンジ方法・対策として、
- バリューパスを超えても売却はしない
2種類のバックテストの結果では純粋バリュー平均法よりリターンが悪くなったそうです - 売りを遅らせる=売りが必要になっても、1期間は保留して待つ
純粋バリュー平均法よりさほどリターンが悪くならなかったそうです - 売却は一定額までに制限してポートフォリオ比率の大幅な変動をさげて節税する
- 他の投資で発生した損益と通算できるよう売却の時期を調整する
- 非課税口座を活用する
などをあげています。
しかし、バリュー平均法の基本的な考え方にもどると、売却が必要になるということは、マーケットは相当に高騰しており、やがて下がり平均的なところに戻ってくる、と判断していることになります。いずれ下がると判断しているのだから、売らずに放置してみすみす下がるのを見ているよりは、税金を払って売却し、リスク資産比率を下げて次の波に備えたほうがよいというのがバリュー平均法の基本的な考え方といえるでしょう。
具体例で試算してみます。たとえば、含み益が20%の状態で、資産の1/4を売却したときにかかる税金(税率20.315%で計算)は、全資産の1%程度です。バリュー平均法により売却が必要になった状態からであれば、1%程度の下落はかなりの確率で起こる(と考える)ということなのだと思います。
別の記事で詳しく分析しますが、バリュー平均法での売却は、含み損のときにも発生することがあります、その場合にはもちろん税はかかりませんし、将来の売却で発生した利益と損益通算ができます。
売却にともなうコスト
売却にともなうコストといってまず一番に思い浮ぶのが、売買手数料ですが、これはバリュー平均法特有の問題とはなりません。
売るか買うのどちらか片方を、3ヶ月に一回行うだけなので、コスト平均法よりも売買金額が増える傾向にあることを考慮したとしても、一般的なドルコスト平均法と比べて明らかに不利になることはなさそうです。
売却固有のコストということで、注意が必要なのは投資信託の信託財産留保額です。バイ&ホールドであれば、信託財産留保額よりも運用コストを重視すべきなところ、バリュー平均法の場合は、そう遠くない将来に売りもありうるので、信託財産留保額もそれなりに重視して比較する必要があります。
バリュー平均法に限った話ではないのかもしれませんが、商品の運用コストの比較では、ありそうな売買シナリオをいくつか決めて、具体的に各シナリオにおける総運用コストを計算しするのがよさそうです。
バリュー平均法で使う商品の選定に関して、私が考えたことについてはまた別エントリーでご紹介したいと思います。