日興アセットマネジメント株式会社より、国内株式クラスの新しいETF設定のアナウンスがありました。その名も「上場インデックスファンド MSCI 日本株高配当低ボラティリティ」< 愛称:上場高配当低ボラティリティ>です。
お恥ずかしながら、当初ニュースリリースを見てベンチマーク(連動対象)が「MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数」であると知った時に、中身が全く想像できませんでした。
次第に情報が出てきてその内容がわかってくるにつれ「むむ、これはよさそうだぞ?」と興味津々になってきました。
これまでに拝見した情報および自分の考えを整理してみます。
ETFと指数の情報
「上場インデックスファンド MSCI 日本株高配当低ボラティリティ」< 愛称:上場高配当低ボラティリティ>の設定については
でアナウンスされています。
また、すでにインデックス投資ブログでも取り上げられています。
- 上場高配当低ボラが12月1日上場。日興アセットマネジメントから – 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)
- 第2弾! 最小分散ポートフォリオを再現するETFが登場します – バリュートラスト|価値を生む・未来を託す・投資を歩く
ベンチマーク(連動対象)の指数は
このほど新しく開発された株価指数「MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数」の構成銘柄に投資し、同指数の計算方法に従ってポートフォリオを構築することなどにより、指数の動きと連動することをめざします。
にあるように「MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数」とのことですが、まったくなじみがなく、これだけでは全く想像がつきません。
ところが2015年11月11日付の日興AMのコラム-ETFコラムNo.38 新ETFの開発ふたたび|日興アセットマネジメントを見るとその内容がよくわかります。
日興AMが「こういう指数を作りたい」という思いを持ち開発し、運用できるようにMSCIに算出を託したものなんですね。指数ロジックの持ち込み、ということがあるのは初めて知りました。
この指数は伝統的な時価総額比率の指数ではなく、ある一定のロジックに基づいて決められている、いわゆる「スマートベータ指数」です。
「スマートベータをアクティブファンドとしてみると、雑に作ったアクティブファンドを安売りしたようなもの。」という評があったりもしますが(参考:[速報]投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year2014 結果発表 #foy2014 | 1億円を貯めてみよう!chapter2)、十分分散されていて、十分低コストで、ロジックが客観的に検証可能・再現可能で、その内容が妥当・心地よいと思えるなら悪くないと思います。人に依存していて永続性リスク・ヒューマンリスクがあるアクティブよりはよい。
「MSCIジャパンIMIカスタム高流動性高利回り低ボラティリティ指数」はてんこ盛り…でもそれがいい
ETFコラムNo.38 新ETFの開発ふたたび|日興アセットマネジメントをよむと、指数の特徴がよくわかります。
指数のロジックは以下の通りです。
- GICSの業種分類の4010-銀行、4020-その他金融、4030-保険、404020-リートをユニバースから除外
- 一カ月の値付率が85%未満の銘柄を除外
- 一カ月の売買代金の上位400銘柄を選定
- 配当利回りの高い上位150銘柄を選定
- MSCI Global Minimum Volatility Indexと同じ最小分散になるように最適化を行なう手法で、同150銘柄の最適化を行なう(最大ウエイト1%・最少ウエイト0.05%の制約付き)
特徴をピックアップすると
- 銀行・金融・REITを除く
- 高流動性ーコスト低減・安定した運営
- 高配当
- 最小分散
- ウェイト制約ありー等金額配分志向
になるでしょうか。すごいてんこ盛り。
投資家のニーズをがっちりとらえ、運用コストにも気を配る。目標をしっかりと設定して、うまくトレードオフをしながらよく設計された雰囲気が伝わってきます。特徴を全部名前に盛り込むと長くなりすぎるので泣く泣く、一部省略されたに違いありません。
私はその指数の名前には含まれていない「ウェイト制約ありー等金額配分志向」がとても気になっています。
コラムにはTOPIXとのセクター別ウェイト比率の比較があり大変興味深い。TOPIXにはこんなに銀行が入ってたんだ…など再認識させられたり。
指数の構成銘柄トップ10もありました。上位はすべてウェイト制約の上限1%なのでもう少し下位まで見てみたいですね。
REITを除くはよく理解できるのですが、銀行・金融を除いている理由・ねらいがまだ理解できていません。ETFコラムNo.31 バーゼルⅢ規制に対応するための新ETF|日興アセットマネジメントあたりを勉強してみる必要がありそうです。
国内ETF…ETFならではの悩みも
「上場インデックスファンド MSCI 日本株高配当低ボラティリティ」< 愛称:上場高配当低ボラティリティ>はETFです。東証に上場され、個別株式のように市場で取引することになります。
ETFということは、ETFならではの悩みがあります。
- 出来高ー流動性
- 基準価額(ETFの本来の価値)と市場価格(市場での取引価格)の乖離
- 売買に手数料が必要
- 分配金
出来高、流動性は、「必要な時に必要なだけ適正な価格で売買できるか」という問題です。市場での売買の「板」(売りと買いそれぞれで値段を提示する場)がスカスカだとこれが難しくなります。
基準価額と市場価格の乖離は、ものを本来あるべき価格で売買できないという問題につながります。買うときも売る時も適正な価格で行えないと大変なストレスになります。長期投資を続けるうえで重要なのは「ストレスの低減」だと考えています。
実際、私は以前このストレスが負担で国内ETFから普通の投資信託(公募型投資信託)に乗り換えています。
TOPIXや日経225のETFのように、寄りの成行注文で安心して買付できるくらいになるとうれしい。普通の投資信託で購入できると、このあたりの心配をしなくてすみありがたいのですが、コストなどとの兼ね合いもあるので難しいのかもしれないですね。
手数料に関しては国内株式扱いということで十分低廉なので、本ETFの場合は問題なさそうです。
ETFであるため、ファンドのキャピタルゲインはすべて分配金として出てきます(義務付けられているとのこと)。
分配金は、途中課税による運用期間内の元本目減りにつながるので、バイアンドホールド派にはないにこしたことはないですが、ETFのメリットとのトレードオフなのでやむなしでしょうか。原資産が「高配当」なので分配金利回りがどの程度になるのかも気にしておいたほうがよいでしょうね。「2007年6月29日~2015年8月31日の期間ではTOPIXとの比較で、平均+0.66%」とのこと。
さてどうするか…
ここまで見てきて、「さて自分はどうするか…」について考えてみます。
コストも十分低廉(税込信託報酬0.378%以内、銘柄数が最大150でコストに対する意識がうかがえるし、国内株式なので実質コストも抑えられるだろう)、特徴が魅力的で、心地よく感じられるので、活用する予定です。国内株式クラスの一部をこのETFに割り当てるイメージをもっています(いわゆるサテライト)。
とにかく心配なのは「出来高ー流動性」。こればっかりは実際取引が始まってみないとわからない。まずは上場後の様子を見ていきたいと思います。
それにしても、この商品の開発のきっかけが、個人のインデックス投資ブロガー水瀬ケンイチさん(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記))、経済評論家の山崎元さんとのお酒の席だったそうで。
個人インデックス投資家・ブロガーの声・影響力が、だんだん運用・販売の現場に届き始めているということでしょうか。良い投資環境を目指して切り開いてこられた先人、先輩インデックス投資家、ブロガーの皆様に感謝感謝です。私も微力ながら少しでも貢献できるようになりたいです。
日興アセットマネジメントさん、グッジョブです!b(^^)d