既に多くのブログ等で取り上げられているとおり、ニッセイアセットマネジメント株式会社が「<購入・換金手数料なし>」シリーズの3ファンドの信託報酬率を大幅に引き下げます。
信託報酬率引下げ(投資信託約款変更)についてがニッセイアセットマネジメントからのプレスリリースです。
私は、インデックスファンドを資産形成のための道具(investment vehicle)として活用しているインデックス投資家なので、インデックスファンド商品の競争は大歓迎です。
ただし、手放しで何でもかんでも安ければ歓迎というわけではないのです。ファンドが「あたりまえ品質」をしっかり確保していて、競争が健全で持続可能なものである限り、という大前提が必要です。
この記事ではインデックスファンドの「あたりまえ品質」、「健全で持続可能な競争」について考えてみたいと思います。
信託報酬引き下げの動きのきっかけは若年層のネットワークでの声!
この引き下げは、日経新聞 編集委員である田村正之さんの署名記事(真相深層)投信コスト二極化 「超格安」の指数連動型、20~40代つかむ 高齢層、高くても積極運用型 :日本経済新聞にて示唆されていた動きです。
この記事によれば、きっかけは
- 三井住友アセットマネジメントが、これまで確定拠出年金(DC)向けだった超低コスト投信を、ネット証券向けに一般販売を始めたこと
- インターネットは若い世代の書き込みですぐに「祭り」状態になった。「グッジョブ!」「最終兵器だ」。三井住友の横山邦男社長は「予想外の反響の大きさに驚いた。低コストで長期で資産形成したい若年層への手ごたえを感じた」と話す。
- 数年前から「購入・換金手数料なしシリーズ」で低コスト投信を広げてきたのがニッセイ。「若い世代は、ネットを駆使してコストを比較して買う。やがて資産運用の中心的な層に育つ彼らに、いち早く使ってもらいたい」(上原秀信取締役)という狙いだった。
(真相深層)投信コスト二極化 「超格安」の指数連動型、20~40代つかむ 高齢層、高くても積極運用型 :日本経済新聞より
とのこと。
私は、まさにアラフォーの資産形成層、インデックスファンドを資産形成のための道具(investment vehicle)として活用しているインデックス投資家で、インデックス投資ブロガーで、三井住友のDC専用インデックスファンドの一般開放で「祭り」状態になった一人です。
この信託報酬引き下げ、インデックスファンド間の競争のきっかけの一端を末席ながら担うことができたこと、大変うれしいです。
ニッセイアセットマネジメントさん、ネットを駆使して低コストファンドを活用する世代を、将来の資産運用の中心的な層ととらえているにも関わらず、投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2014第一位の栄冠に輝いたときにも表彰式に参加されてないんですよね。コストを下げるための施策の一貫、もしくは、もはやネタになってしまっていて、今更来にくいとか特別な事情があるのでしょうか…?なにはともあれ投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2015にはぜひ会場にきていただきたいな。
両社のターゲット顧客にバッチリ合致しているわけで、私も今回の引き下げ、インデックスファンド商品の競争は大歓迎です。
ただし、手放しで何でもかんでも安ければ歓迎というわけではないのです。ファンドが「あたりまえ品質」をしっかり確保していて、競争が健全で持続可能なものである限り、という大前提が必要です。
低コストを歓迎する前提は、インデックスファンドが「あたりまえ品質」を備えていること
インデックス投資家は、インデックスファンドのコストにとにかく厳しいです。運用報告書が出るとすぐに実質コストを計算したりファンド間で比較したりと、ほんとに厳しい。はたから見ると「コスト!コスト!」しか言ってないように映るかもしれません。
これは「資産運用においてコストは確実なマイナスリターン。期待リターンが高々数%の資産の運用において、0.数%の確実なマイナスリターンの影響は大きい。コストは確実にリターンを蝕む」と考えているからです。
そう、正確には「コストが低い」から歓迎しているわけではなく、「コストが安ければ、目減り分が減るため、ベンチマークからの下方乖離を軽減でき、リターンの底上げにつながるだろう」と考えているからなのです。
この「コストが低い→リターンの底上げ」の思考には、各インデックスファンドが「あたりまえ品質」を備えていることという前提があります。
「あたりまえ品質」は、製造業などでよく使われる言葉で、モノやサービスが当然備えるべき品質のことです。たとえば、車であれば、アクセルを踏めば加速し走行できなければいけないし、周囲の流れに乗れなくてはいけない。ブレーキを踏めばしっかり止まらなければいけない。法制で規定されているもの、規定はされてないけど、利用者が暗黙的に当然と思うもの、様々あります。
利用者がインデックスファンドに求める「あたりまえ品質」として思いつくものを上げてみます。
- ベンチマークにしっかり追従できていること
- コンプライアンス
- 法制の定める通り資産を分別管理していること
- 決算、運用報告を適切に行うこと
- 運用状況を確認できること・ファンドのパフォーマンスを検証できること
- ファンドが持続できること
ファンドの品質にはこれ以外にもあるかと思いますが(分配金をできるだけ出さない、サーバーが安定稼働するとか、ホームページ・報告書がきれい見やすいとか、コールセンターの対応がよいとか、広報からの発信がマメとか)、万人があたりまえと思うほどではなくnice to have、付加価値的な魅力品質になるでしょう。
そう、ベンチマークにしっかり追従できているはず・追従してくれるはず、という前提のもとに、コストが低いものを歓迎しているのです。コストが0.2%低いからと言って、稚拙な運用でベンチマークから0.5%乖離しましたという「安かろう悪かろう」では元も子もありません。
今回のコスト引き下げの先陣を切ってくださった三井住友アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメントの商品が「安かろう悪かろう」だといっているわけではありません。念のため。
また、この「あたりまえ品質」の主たる要素、ベンチマークの追従具合を、外部から評価比較できるようにするため、ベンチマークの配当込み・配当抜きを明確にしていただきたい。もっと言えば配当込みにそろえていただきたいです。もちろん、本気で配当抜きを目指しているファンドは私はノーサンキューです…。
ファンドの持続性もユーザーの暗黙的な関心事、期待する「あたりまえ品質」です。「チャレンジしすぎちゃった。だめみたい。やーめた。」で繰り上げ償還になってしまっては、これもまた元も子もありません。
インデックスファンド間の健全な競争は大歓迎
大前提である「あたりまえ品質」を確保・維持したうえでの、健全な競争は大歓迎です。
競争原理は資本主義の主たる基本原理。健全な競争がなければ成長もありません。インデックス投資は、資本主義の基本原理と、それによってもたらされる成長を信じ託す投資ともいうことができます。
我々、ユーザー(受益者)にも、この健全な競争を支えるためにしなければならないことがあります。いいものはいい、悪いものは悪いと声をあげ、行動で示すことです。
そのためには、我々も賢く強くならないといけない。微力ながら私もブログなどを通じて貢献していきたいと思います。