米国ETFをメインにするためには?

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バンガード社の最新の総経費率が公表され、さらに下がったようです。この、あくなき低コスト追及の姿勢には一切のブレがなく、頼もしい限りです。

また、先日、バンガード社のETFの多数が、日本国内の証券会社で売買できるようになりました。

さらに、昨年あたりから日本国内の証券会社の外国株式特定口座対応がはじまり、米国ETF利用上の最大のハードルの一つが解消されつつあります。

これらの状況の変化により、米国ETFを投資商品(investment vehicle)にすることも可能になりつつあるような気がします(改善されつつあるとはいえ、以下で見るように、知識と手間がかかることには変わりありません)。

しかし、米国ETFに関する情報はあまり多くないこと、当然日本向けを想定して設計された商品ではないので日本人投資家が利用するにあたってはアレンジが必要なことなど、依然として、勉強して知らなければいけないことが多くあります。

この記事では、米国ETFをメインにするために必要なこと、という観点で思いつくことを書き出してみました。

自分用のTODOリスト的になってしまいまして、取り立てて真新しい情報はないかもしれません。

基本スキル

いわゆる投資信託とETFの違い

ETFは、いわゆる普通の投資信託とは使い勝手に差があり、普通のコツコツ投資のインデックス投資家にとっては、ETFのほうが不便なかわりに、運用コストが低く抑えられているということ。

特におさえておくべきことは

  • 金額指定での売買ができない
  • 分配金が自動的に再投資できない
  • 市場売買のため取引価格が時々刻々変化する

あたりでしょうか。

米国株式の取引方法

日本の証券会社では、米国ETFは外国株式として扱われます。注文方法などが国内株式・国内ETFとは異なります。

海外の市場での売買になるので、取引可能時間も異なり、米国の場合、日本時間の深夜(23:30から、夏時間の期間は22:30から)になります。

証券会社によって差はありますが、円と米ドルの両替が必要になることもあります。

英語

ファンドからの詳細情報など、どうしても英語でないとアクセスできない情報は覚悟せざるを得ません。

英語に拒否反応さえなければ、ある程度「慣れ」の問題なのかもしれません。

複数口座のハンドリング

日本の投資信託やETFだけであれば、現在は1つの証券会社の口座で完結することが可能です。

しかし、米国ETFに関しては、各社の手数料体系や、特定口座対応の有無など、まだまだ差があるため、すべてを1つで完結するということが現実的ではありません。

複数の口座を活用・管理する手間とスキルが必要です。口座間の損益を通算するため確定申告をしなくてはいけなくなるケースも出てくるでしょう。

ファンドの運営方法

米国ETFがどのように運営されているかは前提として知っておく必要があります。

日本の投資信託、ETFの場合は、すでに情報が多く(たとえば、ファミリーファンド方式、ファンド・オブ・ファンド、指定参加者によるETFの組成、裁定取引のしくみなど)困りませんが、これと同等の情報は把握しておいたほうがよさそうです。

種々のデータの円換算方法

ファンドに関するデータは基本的に米ドル単位で公開されます。これを日本円で扱うための換算方法について把握しておく必要があります。

どこの、いつの為替データをつかうのかなど。時差があるため、日次単位でのデータを扱う場合には特に「いつの」という観点は重要です。

統一した基準がないと、データの相互運用性が確保できません。自分で計算したデータと、他の人が計算データを組み合わせてなにかする、ということができなくなってしまいます。

税制

米国ETFの運用・取引では、米国でも課税されます。ただ、日本と米国の間では租税条約が締結されているので、個人への二重課税を回避するために外国税額控除というしくみを利用することにより、一定の条件のもと一定額を取り戻すことが可能です。まずこの外国税額控除のしくみについてよく理解する必要があります。

この外国税額控除を利用するためには、確定申告する必要があります。しかし、条件によっては確定申告の義務が発生しないこともあり、確定申告をして外国税額控除を受けるのと、確定申告をしない場合とで、どちらが総合的にお得か、といったトレードオフ判断ができるようにならなくてはいけません(もちろん必須ではないですが、できることならお得にしたいですよね)。

なお「(米国に限らず)外国ETFで二重課税がされている。取りもどすためには外国税額控除が必要」というのは、外国ETFのデメリットではなく、メリットであり、「日本籍の投資信託やETFでは、発生している二重課税分を取り戻すことはできないが、外国ETFなら、外国税額控除制度により一部取りもどすことができる」というのが正確なところのようです。

厳密にこの裏を取るためには、原資産の国と、ファンドの籍がある国、日本の間の、様々な税制について正確に理解する必要がありますが、個人レベルでこのあたりの裏を取るのはなかなか手ごわいと言わざるを得ません。

ファンド・インデックスに関する情報

ファンドがベンチマークにしているインデックスは、日本人にとってはなじみが薄いもので、アセットアロケーションを検討する際に必須の重要な情報があまりありません。

日本であれば、国内株式、先進国株式、新興国株式、国内債券、先進国債券、新興国債券といった、基本的なアセットクラスはすでにあり、ベンチマークインデックスもほぼ決まっているうえ、それぞれの情報も豊富で容易に入手が可能です。

たとえば、各アセットの期待リターンやリスク、各アセット間の相関関係、それぞれのインデックスのベンチマークデータおよびそれを利用した各種分析など。

他方、米国ETFは、当然、基本は米国人向けであるため、商品構成も米国株式、米国を除く先進国株式、米国を除く全世界株式と米国視点になっています。

日本でこれらを利用する場合、それぞれのリターンやリスクは日本円換算の値で考えるべきですし、日本債券、日本株式や、必要に応じて日本視点での外国資産(MSCIコクサイなど)との相関関係を把握しておく必要があります。

また、ファンドの運用形態、資産規模、出来高、市場価格と基準価額の乖離率などの情報も重要です。

市場価格と基準価額の乖離率については、以下の記事で簡単に確認しています。

米国ETFの乖離率の水準
本日、バンガード社から、50本の米国市場上場のETFが、日本の証券会社を通じて売買できるようになることが発表されました。 50本の米国...

これらの情報は、日本投資家が、ちゃんと運用するためには必須のもので、米国ETF導入の障害の一つでもあるので、ぜひ運用会社に情報の提供の検討をお願いしたいところです。もちろん、コストのかかる話なので、トレードオフ判断して総合的に全体に利益になると判断できた場合だけでかまいません。

証券会社での取引環境

先輩投資家諸兄のみなさんのお話をうかがっていると、現在のインデックス投資環境は昔に比べ大きく改善されているようです。外国株式についても、特定口座対応など改善されてきています。諸兄のご尽力に敬意を表するとともに感謝いたします。

しかし、外国株式の取引については、手数料が高かったり、使い勝手がよくないなど、まだまだ改善の余地が多く残されていることも事実で、特定口座対応、売買手数料水準、為替手数料、外貨の使い勝手など、今は「あちらをたてればこちらがたたず」で決定打に欠ける状態です。

分配金自動再投資のしくみ(DRIP; Devidend Re-Investment Program)の整備もぜひ検討していただきたいところ。

外国株式取引に関する、各証券会社の今後の健全な競争に期待をしたいと思います。

まとめ

バンガード社の一連の発表や、ETFの出来高・乖離率などをみるにつけ、金融大国米国のパワーに圧倒されます。

MSCIコクサイの国構成比などをみていたときに、日本基準でアセットアロケーションを組むより、米国基準で「米国+そのほかの国の株式」や「米国+日本+そのほかの国の株式」でとらえたほうがわかりやすく、コントロールできるのではないかと考えたのですが、これを、一歩具体的に進めてみたいと考えています。

現在のアセットアロケーションは、VTへのリレーを想定したものですが、VTI+VXUSや、VTIの一部をVCRやVDEにしてリスク低減を狙うなども視野に入れて、じっくり勉強していきたいと思います。今すぐやらなければ大損する、ということでもないので、あせらず、じっくりすすめて、よく納得したうえで判断できるようにしたいと考えています。

日本の運用会社もバンガードに負けないよう頑張っていただきたいと思います。そのためには我々投資家も賢くならないといけないですね。

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